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規制機関はクリプト市場の操作に注意を払っています。重要な問題はこちらです。

規制機関はクリプト市場の操作に注意を払っています。重要な問題はこちらです。

当初はMarketsMediaにて発行

コンプライアンス・イン・フォーカス(Compliance in Focus)は金融市場の規制および監視・監督を実施する際にコンプライアンス担当者が直面する課題に関するトピックを扱うコンテンツシリーズです。 コンプライアンス・イン・フォーカスEventusと共同で制作しています。

マイク・カスティリオーネ(Mike Castiglione)、Eventusのデジタル資産、規制業務ディレクターによる

規制の厳しい業界で働く者であれば、たいていの場合、規則が存在する理由には事情があることを理解しています。ある人物が数年前に間違いを冒したか、不正行為を行ったため、現在、監視が入るようになりました。

マイク・カスティリオーネ

不名誉なことに、1929年の世界恐慌において、チェース・マンハッタン銀行の頭取であったアルバート・H・ウィギン(Albert H. Wiggin)は開示せずに自分の自社株式を空売りし、当時の金額で400万ドルの利益を得ました。連邦議会はこれが発覚した際に、1934年の証券取引法(第16条)にいわゆる「Wiggins Provision(ウィギン条項)」を加え、そのような取引を禁止し、会社の取締役の報告を義務付けました。その時代の同様の事件は他にアーサー・W ・カッテンによる穀物の価格操作があり、この事件により、SECと1936年の商品取引法は需給の自由な動向を妨げるインサイダー取引、空取引、なりすまし、レイヤーリングおよびその他の不正注文などの「操作的および欺瞞的手法」を禁止しました。

クリプトに対する規制を作成する政策立案者は、初めにマネーロンダリング防止(AML)の取り組みに焦点を合わせ、市場操作に対するこれらの監視をクリプトマーケットまで広げています。Eventusの最近の報告書によると、規制機関は新しい金融商品を精査し、クリプト取引はその最優先事項となっています。たとえば、SECはクリプトサービスを構築しているブローカーディーラーの調査を行うことを約束し、CFTCは自身のデジタル資産などの新市場における操作に対する取引監視を向上させるための「数年間の」イニシアティブを継続すると表明しました。

米国外でのクリプトに関する規制を見ると、英国の金融行動監視機構(FCA)は、クリプトなどの注目される商品は継続的に対象となると予想されるため、規則の制定における「抑止力」について考慮していると述べました。EUの新しい包括的な暗号資産市場規制法(MiCA)は2024年12月に完全に施行されます。6月、香港の証券先物事務観察委員会(SFC)は暗号資産取引プラットフォームに関する指針(guidelines for virtual asset trading platforms)を発行し、クリプト市場の操作および市場での不正行為を防止する内容を1つの条項にすべて盛り込みました。SFCは運用者が「定評のある独立業者が提供する効果的な市場監視システムを採用するべきです」と述べています。

一方、金融機関のコンプライアンス担当者は、苦労して得た教訓を、自社がデジタル資産を安全かつ規則に準じた方法で構築できるよう、指針として利用する必要があります。金融機関は経験豊富な実務者が設計し、顧客の意見に基づき非常に迅速にカスタマイズされた取引監視技術の必要性について述べています。

今日の監視技術は深刻にとらえ、適切な企業文化により支えながら実装することで、クリプト市場の操作に効果的に対処し、規制機関のリスクに対応することができるでしょう。これらの要素は、コンプライアンスの専門家には非常に重要であり、ビットコインETFのような新商品を取り扱うことができ、またクリプトに対する規制が制定されても迅速に対応することができるのです。これらすべてのピースが揃えば、規制機関は最近の制定事例が示す通り、他の点に注意を向けていきます。これはブローカーディーラー、先物取次業者(FCM)、銀行、プロップファーム、その他定評のある金融機関におけるデジタル資産の規制に対する戦略を作成する責任を負うコンプライアンスチームには重要な教訓となります。

大規模な技術的能力

効果的な市場不正行為の監視の実施には、大規模なデジタル資産の注文、取引および市場データを取り込む技術的能力が必要です。その量は、含まれるトークンの数と取引が年中無休であることを考慮すると、巨大な規模となります。すべての技術ソリューションは、同じ規模を取り扱った経験をもって行う必要があります。

専門家によるクリプト市場の操作に対処するための重要なアプローチは、さまざまな資産クラスの市場操作のパターンを認識できる適切な能力に基づいて行う必要があります。エンタープライズソフトウェアは、適切な人物がかじ取りを行う必要があります。不注意の場合はコミュニケーション不足を防止できません。Google Docsはすべてのミスタイプを検知することはできません。ChatGPTでさえ、人工的な錯覚を検出するには人間のサポートが必要です。同様に、取引監視技術も熟練した慎重な専門家が各企業のニーズに合わせて手順を選択し、アラートを選別する必要があります。チームはソフトウェアおよび人材の相互作用により、迅速にリスクを検出することができます。

適切な文化とは、取引監視担当者に対しアラートの調査を行い、規制機関に尋ねられる前に問題を検知する自由裁量とリソースを与えるなどです。これらのリソースは、その技術が監査記録を維持しながら軽微なアラートの修正の多くを自動化できるようになれば、非常に効率的となります。

最後に、ほぼすべての主要な管轄区域がIOSCOのクリプトに関する相談報告書を読み、それに基づいているため、クリプト市場の操作には新しい規制の枠組みが必要となります。たとえば米国では、CFTCは詐欺行為が行われた場合のみ、不正を訴追することができます。CFTCの理事(Chair)であるベーナム(Behnam)は以下のとおり述べています。米国では規制機関が「まず不正行為を最小限に抑えるために積極的に規則を制定していくこと」ができる規制の枠組みが必要です。

多くのデジタル資産市場の取引を行ったりオーダーを取り扱う多くの企業は、規制機関の命令がなくとも、自社の商品スポット市場の注文に関し、既に取引監視を使用しています。その他の企業はさまざまな理由から、リスクを計算したうえであえてこの選択を行っていません。この違いにより、企業によっては商品を発売し、規制機関の監視を避けることを望む場合があります。規則が改善されると、消費者保護を行う一貫性のあるアプリケーションが開発されたり、トレードの操作を防ぐことができます。

クリプト市場の操作に対処することは、規制に関するコンプライアンスおよびクリプトETFなどのデジタル資産技術の拡張された利用法の両方にとって重要な要素です。規制機関は問題に対処するためにさまざまな手段を使っています。例として、1929年の世界恐慌やその後の金融危機などにみられる状況があります。Eventusは自社の報告書において、今こそコンプライアンスリスクを再評価し、貴社が行っていることがクリプト規制の動向によって何年後かに疑問視されるかもしれないと予測することが重要だと結論付けています。クリプト市場に対処するための迅速な定評のある技術と適切な文化は、その解決策の一助となるでしょう。